2015年3月22日日曜日

【狛犬アルバム】調神社(埼玉県さいたま市浦和区岸町)


 調神社は、JR浦和駅から徒歩10分ほどの住宅地にある神社です。「調」と書いて「つき」と読むことから、月に住むといわれていた兎が神使となっている珍しい神社です。2015年3月に訪問しました。

<設置されている場所>
通りに面した参道の左右

<台座の年号>
萬永二年(1861年)
平成二十五年(2013年)複製




 神社の境内に入ると、参道の左右の高い台座の上に、さっそく狛犬ならぬ狛兎を発見しました。草を食むくちもとの軟らかい雰囲気がかわいらしく、心が和みます。阿吽にはなっていませんが、ともに子兎がじゃれついています。石の材質が新しいなと思い、よくよく台座を見ると、「萬永二年(1861年)」と彫られた左側に、「平成二十五年(2013年)複製」とありました。なんと素晴らしい。過去の歴史を残しつつ、新しい時代に複製したことがわかるように彫られている丁寧な仕事ぶりに感服しました。

 参道を進むと手水舎にも大きな兎像がありました。想像を上回る大きなサイズで、まるでカピバラのようでもありました。



 その先に進むと右手に、先代が屋根の下に置かれていました。150年の月日により摩耗してしまった狛兎ですが、二代目を迎えた今はこうして屋根の下で隠居生活です。この初代への思いやり、素晴らしいです。



◆「『狛うさぎ』が世代交代!!」(Web版狛犬の杜) - 古い石造物がいつの間にか姿を消す悲しい時代…先代を大切にする調神社の対応は石造物の保存のあり方を示すモデルと思います。調神社は、式年遷宮を迎えた伊勢神宮と深い関係のある古社…現在、境内の改修工事が進行しておりますが、風化した先代狛うさぎの復元はその一環…参拝を兼ねて新旧狛うさぎを訪ねることをおすすめします。

 そして拝殿の左右にはブロンズ製でしょうか、大きな用具を支える獅子のけなげな姿がありました。



 拝殿には見事な木彫りの兎が彫られており、灯籠にも金の兎がいました。






 ちなみに、「調(つき)」は「貢(みつぎ)」と同じ語源で、租庸調の「調(Wikipedia)」のことで、古来における税として国家に納める繊維製品のことです。ここ調神社は古来にそれらの貢物を納めるための倉が建てられたことに由来しているそうです。また、ここ調神社は鳥居のない珍しい神社としても有名ということでした。

◆「調神社」(公益社団法人さいたま観光国際協会) - 伊勢神宮へ納める貢(調)物(みつぎもの)の初穂を納めた倉庫群の中に造営されたため、貢物搬出入の妨げになる鳥居がないと伝えられています。

 実は池の噴水にも石の兎がいたことを調べておきながら、うっかり忘れていました。残念ですが、また行く機会があれば、次回は忘れずに池にも行きたいと思います。そして、帰りにおみやげとして信楽焼の小さな兎のお守りを一対購入しました。このように歴史を大切にし、守りながらも新しい狛犬(兎)を作るような神社がもっと増えてくれたらいいと思います。


<基本情報>
調神社
埼玉県さいたま市浦和区岸町3-17-25


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<関連サイト>
◆「調神社」(Wikipedia)
◆「調神社」(公益社団法人さいたま観光国際協会)