2012年10月17日水曜日

【狛犬アルバム】土佐稲荷神社(大阪府大阪市西区北堀江)


 さて、今回の大阪狛犬巡りの旅、最後の目的地は土佐稲荷神社です。市営地下鉄の西長堀駅からすぐ近くです。

 ここは、江戸時代は土佐藩蔵屋敷内にあり、明治になり土佐藩出身の岩崎弥太郎によって三菱財閥の創業の地となった場所でもあります。神紋には三菱のスリーダイヤが描かれており、玉垣にも三菱グループの企業名がずらりと並んでいました。


<設置されている場所>
鳥居の前

<台座の年号>
明治二十六年(1893年)





 拝殿前にブロンズの立派な狛犬が構えていました。尻尾がメデューサの蛇の髪の毛のようにうねっています。風雨にさらされて独特の色合いになっていて、おどろおどろしいのですが、顔つきをよく見るとそれほど怖くはありせん。台座には明治二十六年とありましあが、おそらく戦後になって再奉納されたものでしょう。

 境内はそれほど広くないのですが、無数の狛犬と狐像がいて、ちょっとうんざりするくらいでした。その中からこれはと思うものをいくつかご紹介します。


<設置されている場所>
境内東側

<台座の年号>
明治二十七年(1892年)



 小型の東大寺南大門型の狛犬を発見しました。なかなか見ない貴重なものだと思われます。ただ相棒を失った一匹狛犬でした。


<設置されている場所>
境内東側

<台座の年号>
明治三十八年(1905年)





 シンプルですが、丁寧に作られている狛犬です。丸みを帯びた体つきがかわいいですね。


<設置されている場所>
境内東側

<台座の年号>
不明





 こちらも上記の狛犬に似た丸みを帯びたものですね。吽形の角をよく見ると、前後に小さな角と大きな角が連なっていました。

 また、稲荷神社とあって狐像もたくさん設置されていました。

<設置されている場所>
境内東側

<台座の年号>
昭和六十一年(1986年)





 この一対の狐像は、新しいものですが立派な造りです。高い台座に断って、険しい顔つきで見下ろしていました。


<設置されている場所>
境内東側

<台座の年号>
不明





 逆立ち狛犬もいました。

 また、狐だけでなく、うさぎ像も置いてありました。なぜか地面に直接、ぽつんと…… とにかくたくさんの狛犬、狐像があり、大阪狛犬を巡る旅は少し食傷気味に終わったのでした。




<基本情報>
土佐稲荷神社
大阪府大阪市西区北堀江4-9-7


大きな地図で見る

<関連サイト>
土佐稲荷神社略縁起(土佐稲荷神社)
土佐稲荷神社(Wikipedia)
vol.09 藩邸と土佐稲荷 - 岩崎彌太郎物語(三菱グループのポータルサイト:mitsubishi.com)



【狛犬アルバム】難波八阪神社(大阪府大阪市浪速区元町)


 波八阪神社はかつてから獅子舞台があるということで、気になっていた神社でした。今回訪れてみて、その大きさにびっくりしました。

<設置されている場所>
境内

<製作年>
昭和四十九年(1974年)



 連続写真のようにつなげてみました。

 まず、東側にある鳥居から境内を見るとその時点でかなりのインパクトを感じました。緑色の獅子というより鬼に近いその顔が、憤怒の形相でこちらを睨みつけ、大きな口を開けているのです。近づいていくと、異形の怪物の巨大さに圧倒されます。なんというか、悪趣味というか…… ただ、ここまでやればすごいです。やりきることのすごさというのでしょうか……

 Googleで画像検索をしてみると、どうもお祭りの日の夜には獅子の目が光るようですね。す、すごい……



 ちなみに寄進者のプレートに蓬莱とありましたが、これはあの有名な豚まんの蓬莱なのでしょうか?

 この獅子舞台と比べるとたいしたことなく見えてしまうのですが、三対の狛犬もいました。

<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
昭和四十九年(1974年)





 これは全国どこでも見られる型でした。岡崎古代型と現代型の中間のような感じでしょうか。


<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
昭和四十九年(1974年)





 このブロンズの逆立ち狛犬は動きが軽快ですね。顔つきもひょうきんで、なかなかいい味を出しています。


<設置されている場所>
境内

<製作年>
昭和四十九年(1974年)






 これは典型的な岡崎現代型と言われるものです。阿形が鞠を、吽形が子獅子を携えています。境内の狛犬はすべて、昭和四十九年に再建された際に作られたもののようでした。


<基本情報>
難波八阪神社
大阪府大阪市浪速区元町2-9-19


大きな地図で見る


<関連サイト>

難波八阪神社(公式ホームページ)
難波八阪神社(Wikipedia)
獅子舞台と失われた招き猫「難波八坂神社」【大阪】(日本珍スポット100景)

【狛犬アルバム】敷津松之宮・大国主神社(大阪府大阪市浪速区敷津西)


 今宮戎神社から徒歩で次の目的の難波八阪神社に向かう途中に見つけた神社でしたが、なんとここでは狛ねずみに出会うことが出来ました!実はこの神社は、敷津松之宮と大国主神社が同じ敷地にあり、二つの通りに面してそれぞれ二つの鳥居があるという変わった作りになっています。


<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
昭和五十五年(1980年)





 大国主神社の前には、石造りのねずみが狛犬のように台座に乗っていて、きちんと阿吽の対になっていることから、これは「狛ねずみ」と言っていいですね。阿形が俵を抱え、吽形が打ち出の小槌を持っています。阿形の前歯の出っ歯具合がかわいいです。

 また因幡の白兎の説話の絵とかわいらしいうさぎの石像もおいてありました。これは古事記の伝説で、大国主神(おおくにぬしのみこと)がねずみに助けられるというエピソードにちなんだものです。(大国主神と七福神の大黒天が神仏習合により、一体となって信仰の対象になりました。)

大国主神(コトバンク)




 敷津松之宮の前にはよくある岡崎現代型の狛犬がいましたが、吽形の前に看板が立てかけられていました。支えとして狛犬を使うなんて…… こういうのは残念です。看板の足をきちんと作ればよいのに。






 拝殿の右側には笑顔の大黒様がいらっしゃいました。




 また、境内の片隅には特に破損もない状態にもかかわらず、無造作に放置された狛犬が3体いました。このような光景を見るのは切ないものです。




<基本情報>
大国主神社・敷津松之宮神社
大阪府大阪市浪速区敷津西1-2-12


大きな地図で見る


<関連リンク>
大国さんは狛ねずみ(あまもりのなんやかんや)
大阪のねずみ見っけた!(大国主神社)【大阪市浪速区】(大阪発⇒関西うろつき探検記)
狛ネズミの御利益にチュー目!(ゲ月間お好み書き2008年1月号)
敷津松之宮(Wikipedia)

【狛犬アルバム】今宮戎神社(大阪府大阪市浪速区恵美須西)


 JRの新今宮で南海線に乗り換え、今宮戎駅までやってきました。今宮戎神社は駅のすぐ近く。ここは商売繁盛の神様である「えべっさん」として有名ということで、玉垣(石の柵)には多くの証券会社の企業名がありました。


<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
不明





 砂利敷きの境内にいた狛犬は、ブロンズの立派なものでした。阿吽の位置が通常の逆になっています。阿吽の別は口の開閉以外にあまりないのですが、目玉が彫られていてそれを見ると、吽形はやや下を見ていて、阿形はやや上を向いていることがわかります。

 横から見ると、前脚がアンバランスに長く、こぶのような模様が見られました。渦を巻いたようなたてがみと、ピンと真っ直ぐに立ち上がった尾も特徴的です。控えめながらも、ちょっとしたポイントで個性を主張するブロンズ狛犬でした。


<基本情報>
今宮戎神社
大阪府大阪市浪速区恵美須西1-6-10


大きな地図で見る


<関連サイト>
今宮戎神社(公式ホームページ)
今宮戎神社(Wikiepedia)

【狛犬アルバム】三社神社(大阪府大阪市港区磯路)


 大阪狛犬巡りの二社目は三社神社です。JRと大阪市営地下鉄の弁天町駅から徒歩数分のところにあります。

<設置されている場所>
鳥居の前

<製作年>
昭和十七年(1942年)





 鳥居の前には大宝神社型狛犬がいました。大型でやや丸めの体型です。阿吽のたてがみが、巻き毛と直毛に彫り分けられているのがわかります。


<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
昭和三十七年(1962年)





 拝殿前の狛犬は、直線的でぐっとせりだした胸と反り返った姿勢がかなり個性的です。肋骨が浮かび上がっているのは狼型狛犬の特徴ですが、大型の狛犬でこれほど肋骨が浮かび上がっているのはあまりみたことがありません。なんと、背骨の節も浮かび上がっていました。

 髭や尾の渦巻具合や、阿形は横に立った耳、吽形は伏せ耳など細かな意匠が見られます。いわゆる弥彦神社型の狛犬です。なかなかりりしい表情だなと思い、顔をよく見ると二重まぶたでした。これは珍しい。神田明神の狛犬のような長老的な落ち着きを感じる堂々とした狛犬です。

 そのほかにも末社に2対の狛犬を発見しました。

<設置されている場所>
末社

<製作年>
昭和五十三年(1978年)





 これはどこにでもある普通の岡崎現代型でした。


<設置されている場所>
末社

<台座の年号>
昭和十五年(1940年)





 シンプルですが丸みを帯びた体つきが印象を引きます。吽形のびっしりとそろった前歯も面白いです。台座には昭和十五年とありましたが、阿形の牙や手足の指の部分の彫りの甘さを見ると戦後のもののような気もします。とはいえ、戦後のものだとしても画一的ではないちょっとした個性を感じる狛犬でした。



<基本情報>
三社神社
大阪府大阪市港区磯路2-18-23


大きな地図で見る


<関連サイト>
三社神社(大阪府神社庁)
三社神社(大阪市)(Wikipedia)
三社神社(コマメグ)
狛犬分類研究(6) 護国(狛犬ネット)
「4 弥彦神社型」に弥彦神社型狛犬の特徴のついての解説があります

2012年10月15日月曜日

【狛犬アルバム】大阪天満宮(大阪府大阪市北区天神橋)


 かねてから興味のあった大阪の狛犬を巡る旅は、大阪天満宮からスタートしました。2012年10月に訪問しました。

<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
大正十二年(1923年)






 拝殿の前には中国獅子(中国風狛犬)がいました。サイズはやや大きめで、立派な作りです。阿吽の別がなく、ややのっぺりした表情、首飾りのベルトを付けている点などが中国獅子の特徴です。訪問した際には願掛けをされた方が奉納した白い布を首からかけていました。小さいな子どものよだれかけのようで愛嬌があります。

 上あごがないブルドッグタイプの顔つきでなごむ表情をしているのですが、よくよく前脚を見ると筋肉質で、しかもかなり鋭い爪をしていました。また尻尾が垂れていたのも特徴的でした。


<設置されている場所>
末社 八幡社

<製作年>
不明





 本殿の右手には数多くの末社がありましたが、そのひとつの八幡社には小さく可愛らしい狛犬がいました。目玉が彫られていないのがかえっていい味をだしています。また、吽形の下唇をぐっと噛みしめ上向きに見つめるような表情がなんとも愛らしいです。一般的な関西風の特徴を踏襲したデザインではありますが、同時に個性もあわせ持った印象的な狛犬でした。


<基本情報>
大阪天満宮
大阪府大阪市北区天神橋2-1-8


大きな地図で見る



<関連サイト>
大阪天満宮(公式ホームページ)
大阪天満宮(Wikipedia)
狛犬分類研究(7) 中国獅子(狛犬ネット)
戦争と狛犬(狛犬ネット)
「大阪天満宮、草加氷川神社(埼玉)、子鍬倉稲荷(いわき市)などには、現在、石造りの狛犬がいますが、台座には、戦争のために供出したブロンズ狛犬を再建したという記述が残されています。」

2012年6月3日日曜日

【狛犬アルバム】武田神社(山梨県甲府市古府中町)


武田神社は武田信玄を祀る神社で躑躅ヶ崎館という武田氏三代にわたる館の跡地にあります。大正8年に建てられた比較的新しい神社です。

<設置されている場所>
大鳥居の前

<台座の年号>
昭和十三年(1938年)






お堀に掛けられた橋を渡り、階段を登ると大きな鳥居が見えてきます。その手前に構える狛犬はとても迫力がありました。階段を上りきったところに位置する狛犬は、参拝者が見上げるようになるため威圧感が増します。また、台座も数段組まれており、縦の視線を強調し、上へ上へと視点を上げて行く効果があります。ただし、写真を撮ろうとすると下から見上げるようになるため、顔の表情が見づらくなるのが欠点なのですが……

全体的に筋肉質で、特に胸の筋肉の張り具合はすごい。ただ、ほかの岡崎古代型の狛犬と趣を異にするのはあごひげの巻き毛や顔の表情です。いわゆる弥彦神社型といえるかもしれません。

武田神社はその成り立ちから神社というよりまさに城郭の作りでした。ほかの神社とは異なった趣が感じられました。

<基本情報>
武田神社
山梨県甲府市古府中町2611


大きな地図で見る

<関連サイト>
◆「甲斐 武田神社」(公式ホームページ)
◆「武田神社」(Wikipedia)
◆「甲斐 武田神社 の狛犬」(狛犬の社)

【狛犬アルバム】山梨県護国神社(山梨県甲府市岩窪町)


 武田神社へ訪問する前に、その近くにある山梨県護国神社へ立ち寄りました。当日はのんびりとした雰囲気の骨董市が行われていました。2012年5月に訪問しました。


<設置されている場所>
大鳥居の前

<製作年>
昭和三十三年(1958年)





 大鳥居の手前にいた一対の狛犬はいわゆる岡崎現代型の狛犬でした。ささっと写真をとって、拝殿へ向かいます。


<設置されている場所>
拝殿の前

<製作年>
明治四十五年(1912年)





 拝殿前の狛犬は小ぶりの江戸狛犬でした。たてがみや尾の流れが見事です。顔はひらぺったいかえる型。阿吽の左はほとんどありませんでした。台座には明治四十五年とあったのですが、これは彫っている間に元号が大正に変わってしまったんですね。


<基本情報>
山梨県護国神社
山梨県甲府市岩窪町608


大きな地図で見る


<関連サイト>
◆「山梨縣護國神社」(Wikipedia)
◆「護国神社」(神社探訪・狛犬見聞録)
◆「2003年版 甲斐路に江戸狛犬を訊ねる」(狛犬ネット)
頭でっかちで、手足が貧弱。尻尾はくるんと巻いていて、真ん中は穴……というのがこのへんの狛犬のお約束になっているようです。

【狛犬アルバム】満蔵院(山梨県甲府市武田)


甲府駅から北へ、武田神社へと続く武田通り沿いにある満蔵院は、かつて武田信玄が毘沙門堂を建立した真言宗の寺院です。2012年5月に訪問しました。

<設置されている場所>
石門を入って左手

<製作年>
不明





石造りの門を入って、左手を見ると、小さな社があり、その前に一対の古びた狛犬がいました。かなり風化しており、顔の表情はほとんどわからなくくらいでしたが、小ぶりでピンと背筋を伸ばしたスタイルと、(想像するに)素朴な顔つきは、江戸期のものではないかと思われます。以下のウェブサイトに甲府市内最古との記載がありましたが、これは住職の方曰く、とのこと。はっきりしたことはわかりませんでした。


<基本情報>
満蔵院
山梨県甲府市武田2-10-4


大きな地図で見る

<関連サイト>
◆「 [ 11 ] 満蔵院の狛犬」(こうふをたのしもう 50+1 の宝物)
◆「信玄の信仰」(武田信玄の館)「毘沙門天への信仰」の項
毘沙門天信仰は……武田信玄もまた軍神としてあつい信仰を寄せ、……甲府の満蔵院に毘沙門堂を建て、国内真言宗僧徒の祈願所にした。

【狛犬アルバム】村社熊野神社(山梨県市川三郷町大塚)

日本最古といわれる石造神殿狛犬を見るために、2012年5月に訪問しました。

<設置されている場所>
階段の上
拝殿の前

<製作年>
昭和四年(1929年)
応永十二年(1405年)



 甲府からJR身延線にのって約30分の甲斐上野駅からタクシーを呼んで行きました。日本最古の狛犬を見に行くんですといったら、研究してらっしゃるんですかと聞かれて、少し照れてしまいました。日本最古の狛犬があることはタクシーの運転手さんもご存知のようで、神社についてちょっと待っていてくださいと言うと、わかりにくいので本殿まで案内してくれることになりました。ただし、本殿との間にある柵が邪魔でなかなかうまく撮影できませんでした。車で行く人は三脚を持って行くことをお勧めします。

 この狛犬は柵に覆われていました。素朴なはじめ狛犬の造りで、ひょうきんな顔つきをしています。たてがみや尾の彫り方は直線的というか幾何学的な模様で、寸胴のような胴体も特徴的です。それでも腹はくりぬかれていて(はじめ狛犬には腹がくりぬかれていない者も多い)、(私は確認できませんでしたが)ここに応永十二年と彫ってあるそうです。大きさは意外に大きく80センチほどはあったように見えました。

 かなりご高齢のタクシーの運転手さんによると、昔はそれぞれの村にあった熊野神社がここに合祀されたとのこと。今は市川三郷町というこの町も複数の村が合併してできた町なのだそうです。

 ちなみに随神門をくぐって階段を上った上にも一対の狛犬がいました。こちらは昭和四年のもの。前脚の爪など若干彫りが甘いようですが、顔つきは悪くありません。





 丘の上にあるこの神社からは眺めもよく、1対の狛犬を見るために甲府から往復で2時間、電車とタクシーで5000円ほどかかりましたが、なかなかよい想い出になりました。

<基本情報>
村社熊野神社
山梨県市川三郷町大塚4232



大きな地図で見る

<関連サイト>
◆「三珠町のはじめ狛犬(応永12年!)」(狛犬ネット)
◆「山梨県西八代郡市川三郷町 其の一」(狛犬探検隊)
◆「古い狛犬大好き! ( 山梨 熊野神社 )」(サンクチュアリ)
◆「日本最古?の【狛犬】 <山梨県市川三郷町>」(大人の遠足 ・お山歩日記)