2013年7月15日月曜日

【狛犬アルバム】築地本願寺(東京都中央区築地)


 築地本願寺は400年近い歴史がある浄土真宗本願寺派の寺院です。江戸時代から何度も家事に見舞われ、現在の建物は1934年に伊東忠太の設計によって、古代インド様式(天竺様式)で再建されたものです。2013年7月に訪問しました。

<設置されている場所>
大階段の下の左右

<製作年>
昭和九年(1934年)




 正面に見える大きな階段の両側に翼のある獅子像がいました。台座が寺院側から見てハの字に開いておかれており、首はやや正面入り口のほうに傾けています。

 なんといっても特徴的なのが翼で、まるでグリフォンのようです。上向きにくるりと巻いており、丁寧な彫りが施されています。築地本願寺の設計も古代インド様式ということで、オリエントの雰囲気がただよいます。たてがみはシンプルな波形になっており、毛先が少しだけ盛り上がっています。鋲を打ったようにも見えます。また、前脚の肘も甲冑をつけているかのようです。

 頬には髭が生えていますが、猫のひげのようで、瞳もつぶらなため、顔だけをみると、威厳よりも可愛らしさを感じます。また尻尾はまさにライオンのそれで、一般的な狛犬のようにふさふさとしたものではなく、細長く体に沿って彫られており、尾の先が蛇のとぐろをように巻いています。

 ただ、阿吽の別がしっかりとあることや、横から見ると腰を落とし背筋を伸ばした蹲踞の姿勢で、あばらが浮き出ている点は、まさに狛犬の特徴ですね。


<設置されている場所>
大階段の上の左右

<製作年>
昭和九年(1934年)




 もう一対は階段を上がりきったところの左右に柱と一体化した獅子像がいました。デザインは大階段下のものとほとんど同じものですが、正面を向いており、背筋が垂直で、鋭い爪を持つ前脚ががっちりと台座を掴んでいます。翼はありませんが、胸の筋肉が大階段下の狛犬よりも発達しています。

 身体の後ろ半分がファサードを支える柱と一体化している点が特徴的です。また阿吽の左右が逆になっている点なども設計者の伊東忠太のこだわりを感じずにはいられません。伊東忠太は戦前の日本を代表する建築家で、狛犬のデザインにもなみなみならぬ情熱を持っていたことでも知られています。そのうち伊東忠太の狛犬を巡る旅でもしてみたいですね。

◆「狛犬分類学 6 護国(ごこく)」(狛犬ネット) - 伊東は30代のとき、中国、インド、トルコなどへ3年間(1902~1905年)留学し、同時に欧米も回ってから帰国しています。ガンダーラ美術やヨーロッパのガーゴイル像などに深く影響を受け、「化け物好き建築家」としても有名。


<基本情報>
築地本願寺
東京都中央区築地3-15-1


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Google Street View

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<関連サイト>
◆「浄土真宗本願寺派築地本願寺」(公式ホームページ)
◆「築地本願寺」(Wikipedia)
◆「東京の狛犬」(狛犬について私が知っている2、3の事柄) -  築地本願寺のものは、翼があるので厳密に言えば狛犬ではない。敢えて言えばグリフォンか。築地本願寺を設計した伊東忠太のデザインである。
◆「あ・うん-伊藤忠太の狛犬」(Web版狛犬の杜)
◆「築地本願寺」(狛犬巡り、神社巡りの『コマメグ』)
◆「翼ライオンと動物たち/東京都中央区築地本願寺」(心はスケルツォ♪ 狛犬)

【狛犬アルバム】魚河岸水神社(東京都中央区築地)


 魚河岸水神社は、築地場内市場にある神社です。本殿は神田明神内の水神社にあり、ここは遥拝所となっています。2013年7月に訪問しました。

<設置されている場所>
遥拝所の前

<台座の年号>
昭和十一年(1936年)




 豚鼻でずんぐりとした狛犬がいました。はじめは黒っぽい石で彫られているのかと思ったのてすが、よく見ると後から黒く塗られていることがわかります。黒い狛犬も陰影が強く出て、堂々とした雰囲気になります。

 いわゆる大宝神社型ですが、ふっくらもした口元などは江戸獅子の面持ちです。太い前脚が、鋭い爪を立てて、がっちりと台座を掴んでいます。尾立て型で尻尾のデザインはシンプルです。阿吽の別はあまりなく、ともに頭に宝珠を乗せていました。

 狛犬は向かい合うように置かれていますが、首は90度きっちり傾けて参道の方を見ています。その視線の先にはにぎわう築地場内市場がありました。こうして80年近くも見守り続けてきたのですね。


<基本情報>
魚河岸水神社
東京都中央区築地5丁目


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<関連サイト>
◆「今月の狛犬No40~魚河岸水神社遙拝所」(狛犬の杜別館)
◆「寄進者いろいろ――剣とやくざ」(狛犬について私が知っている2、3の事柄)

【狛犬アルバム】波除稲荷神社(東京都中央区築地)


 築地場外市場にある波除稲荷神社には、狛犬はいませんでしたが、立派な獅子頭がありました。2013年7月に訪問しました。

<設置されている場所>
境内

<製作年>
黒獅子:平成二年(1990年)に再興
赤獅子:平成一四年(2002年)に再興




 鳥居をくぐり、狭い境内に入ると、向かって右には黒い獅子頭、左には赤い獅子頭が、お堂の中からこちらを見据えていました。黒い獅子が置かれているお堂は正式には獅子殿といい、赤い獅子が置かれているお堂は摂社 弁財天社というようです。

◆「境内(けいだい)図」(公式ホームページ)

 黒い獅子頭の歯は金になっており、「厄除天井大獅子」といわれています。また、赤い獅子頭の歯は黒になっており、「お歯黒獅子」といわれています。そして、黒獅子は雄、赤獅子は雌なんだそうです。黒い獅子頭ににい口髭が赤い獅子頭にはあり、あご髭も黒い獅子頭は口の下でつながっていますが、赤い獅子頭は左右に分かれているなど、微妙な違いがありました。またともに角があるようですが、「お歯黒獅子」のほうは宝珠でこの中にご神体が納められているとのことです。

◆「境内(獅子・塚など)ご案内」(公式ホームページ)

 毎年6月に行われる祭では、この獅子頭を担いて練り歩くのだそうです。活気のある築地にこの派手な獅子は似合いますね。

◆「波除稲荷神社の年間行事 例祭「つきじ獅子祭」」(公式ホームページ)


<設置されている場所>
弁財天社のお堂の中

<製作年>
不明(おそらく赤獅子と同じ平成一四年(2002年))



 弁財天社のお堂の中には小さな獅子頭が置かれていました。この獅子頭は立て耳で、お歯黒ではなく、頭の上に宝珠ではなく角がはえています。獅子というより鬼に近い雰囲気です。


<設置されている場所>
拝殿の中

<製作年>
嘉永元年(1848年)



 拝殿の中にも獅子頭が一対ありました。向かって右に金の髭の黒い獅子頭、左に白髭の白い獅子頭がおかれています。ともに嘉永元年(1848年)の製作で、昭和二年(1927年)に奉納されたものとのこと。獅子が獅子を呼ぶ神社なのですね。


<基本情報>
波除稲荷神社
東京都中央区築地6-20-37


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<関連サイト>
◆「波除稲荷神社」(公式ホームページ)
◆「波除稲荷神社の由来」(公式ホームページ)
◆「波除稲荷神社」(Wikipedia)
◆「波除稲荷神社」(神社探訪・狛犬見聞録)
◆「狛犬百連発46 中央区 波除稲荷神社」(B級東京写真日記・・準備中)
◆「波除稲荷神社  ~中央区~」(わんこの目線で、神社巡りをするのでR♪)