2011年4月22日金曜日

【狛犬アルバム】愛宕神社(福岡県福岡市西区愛宕)


 2011年4月に訪問。最寄りは福岡市営地下鉄の室見駅。博多湾岸が一望できる高台にあるため、境内まではかなりの距離を昇らないと行けませんが、登り切ると眺めは最高です。地元ではたんに愛宕神社と呼ばれていますが正式には鷲尾愛宕神社というようで、ここの案内看板によると、三大愛宕神社のひとつとのことです。


<設置されている場所>
幣殿の左右

<台座の年号>
昭和三十六年(1961年)




 ここの狛犬は、他に類をみない怒髪天を衝くようなたてがみがかなり特徴的です。まるで牙のような鋭さ。しかも阿吽でかなり異なるように細かく彫り分けられています。場所は少しわかりにくいのですが、拝殿と本殿をつなぐ幣殿の左右に分かれて置かれています。大きさはやや大きめ、がっしりした太い前脚で、その鋭い爪が台座にかかるなどディテールが素晴らしいです。前脚の肘の部分には、翼のような文様もありました。目は細くつりあがっているのも面白いです。

 これだけでもかなり特徴的ですが、阿吽の関係がかなり変わっています。まず阿吽が逆に置かれています(「狛犬の左右」参照)。また、阿形は背筋をピンと伸ばしているのに対し、吽形は猫背のようにやや前屈みになっています。さらに尾の流れも不思議です。吽形の尾はかなり参道側に傾いていますが、阿形の尾はさほど傾いていません。そして、尾の形も一見同じようですが、よく見ると渦巻きの数や配置が微妙に異なっています。意図的に従来の狛犬の典型的なルールを破ろうとしたような印象を受けました。

 阿形の台座に、「予て父○○○献納の金灯籠は大東亜戦争中金属回収の為供出しましたので今回親族と相諮り唐獅子を再献納いたします 昭和三十六年十月 二台目○○○○、○○○○……」というプレートがありました。ちなみにここ愛宕山には戦前ケーブルカーがあったと祖母から聞きました。そしてそのケーブルカーも、境内の狛犬も金属供出されてしまったのですね。


<設置されている場所>
階段上の神門前
宇賀神社の拝殿前

<台座の年号>
平成十七年(2005年)




 そして、実はこの狛犬をモデルにした新しい狛犬が二対ありました。一つは参道の階段を登り切ったところの神門の左右に、もう一つは本殿左側の宇賀神社にあります(階段左右のほうがややサイズは大きいようでした)。顔つきやたてがみなど全体的にデフォルメされていましたが、このように古い狛犬のデザインが引き継がれていくことはいいことですね。古い狛犬が、大量生産の面白みに欠ける狛犬に置き換わっている神社が多くありますが、愛宕神社の狛犬を見習ってほしいものです。なお、この2つの狛犬を見比べると、オリジナルの狛犬を彫った職人の力量のすごさを実感できました。


<設置されている場所>
宇賀神社の拝殿前

<台座の年号>
不明




 境内にある宇賀神社にも一対の狛犬がいました。福岡市内でよく見られる顔つきの狛犬です。前述の新しい狛犬が奉納されたため、端に追いやられたのではないかと推測されます。おそらく明治から大正期に作られた狛犬と思いますが、このような狛犬もずっと大切にしていって欲しいものです。


<基本情報>
鷲尾愛宕神社
福岡県福岡市西区愛宕2-7-1


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<関連リンク>
◆「鷲尾愛宕神社」(Wikipedia)
◆「愛宕神社」(福岡・博多の観光案内サイト よかなび)
◆「日本三大愛宕 愛宕神社 〜福岡市西区の神社」(九州〜列車で行こう〜下町親父の珍道中)