水天宮は、JR久留米駅から約1km、筑後川沿いの高台にあります。安産、子授けの神様として有名で、全国にある水天宮の総本社です。ちなみに東京の日本橋蛎殻町にある水天宮は、第九代久留米藩主有馬頼徳が、文政元年に江戸の久留米藩屋敷内に分霊したものとのことです。ここには特徴的な五対の狛犬がいました。2011年8月に訪問しました。
<設置されている場所>
大鳥居の前
<製作年>
昭和五十年(1975年)
まずはじめに出会うのは、大鳥居の前の狛犬です。櫛田神社の随身門の前のものと同じく、大宝神社の狛犬をモデルとしたタイプですが、かなり大型のブロンズ製狛犬です。手足が長いドーベルマンスタイルで、台座が高いこともあって迫力があります。阿吽が逆に設置されていました。台座によると、とある会社の五十周年記念に奉納されたもののようです。
<設置されている場所>
中門の前
<製作年>
明治二十八年(1895年)
※はっきりとは読み取れませんでした。
大鳥居をくぐり、長い参道を歩くと、太鼓橋の先、中門の前に狛犬がいました。サイズはかなり大きいです。口元は博多狛犬によくみられるタイプで、吽形の前歯が下唇をかんでいます。阿吽ともに豚鼻、角張った顔、離れた目に大きく垂れた耳。地禄神社の狛犬と面影が似ている気もします。
また、前脚、後脚に渦を巻いた走毛がありましたが、全体的に毛の彫り込みは少なく、尾の背面が平面になっています。これもまた筑後地方によく見られる特徴です(この後に訪れた、高良大社、高良山愛宕神社をご覧ください)。
<設置されている場所>
拝殿の前
<製作年>
不明
拝殿前にいた狛犬は中くらいのサイズ。頭頂部が平で垂れ耳のところは、さきほどの中門前の狛犬に似ています。一方で、たてがみの巻き毛の彫り方、前脚を前後に少し開いた構え方、優雅な尾など全体的には大宝神社など鎌倉時代の木造狛犬をモデルにしたタイプに近い雰囲気です。福岡型と大宝神社型の完成度の高いハイブリッドタイプといったところでしょうか。
<設置されている場所>
拝殿の左奥にある末社 水神社
<製作年>
不明
いました! 小さな肥前狛犬。私がはじめて出会ったはじめ狛犬です。肥前狛犬と呼ばれるタイプですが、非常に小さく、なんと可愛らしいのでしょう。全く獅子には見えず、そして犬でもありません。社寺の石工ではなく、庶民の石工が伝聞と想像だけで作ったのでしょう。その素朴さがまたいいです。
腹の部分は彫られておらず、つながっています。阿吽の違いも口の開き方が少し違うことが辛うじてわかる程度です。たてがみは毛先だけがカールしています。そして、なぜか顔には横に縞模様が彫り込まれていて、鰐のようでもあります。プリミティブな魅力にあふれた狛犬です。
<設置されている場所>
境内左側の小鳥居の前
<製作年>
明治十一年(1878年)
※はっきりとは読み取れませんでした。
水天宮最期の狛犬は、境内の左側から川の方へ降りる手前にある小さな鳥居の左右にいました。阿形は伏せ耳、吽形は立ち耳。吽阿形の口には玉が入っていますが、かなり磨耗してラグビーボールのような形状になっています。吽形は玉乗りで、やや大きめの玉の上に二本の前脚をかけた様子は尻尾を振りながら駆け寄ってくる子犬のようでかわいらしかったです。全体的に磨耗していましたが、完成度が高く、かなり洗練された狛犬でした。
<基本情報>
水天宮
福岡県久留米市瀬下町265
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<関連サイト>
◆「全国総本宮 水天宮 <安産・子どもの守り神様>」(公式ホームページ)
◆「水天宮 (久留米市)」(Wikipedia)
◆「久留米水天宮の狛犬たち」(狛犬写真館)
◆「水天宮(福岡)」(ぶらり寺社めぐり)
◆「久留米 水天宮(すいてんぐう)」(天空仙人)