2010年2月14日日曜日

【狛犬豆知識】2. 狛犬と阿吽

■2. 狛犬と阿吽
 左右一対で置かれた狛犬のうち、口を開いているものを阿形(あぎょう)、口を閉じているものを吽形(うんぎょう)というのは、これは仁王像に由来した形式です。仏教における仁王は釈尊の守護をする役目でしたが、中国へ入ると中国古来の門神の置き方にならって一対で阿吽の表情をした怒髪天を衝くような姿に変わっていきました。明治時代以前の神仏習合の時代には、神社にも仁王像が立っており、仁王は「阿吽」の表情をしていました。神仏習合時代に成立した本地垂迹説では神社の御祭神は仏教の仏(本地仏)が仮に姿を現したものだと考えられていました。ここから本地仏を守護する仁王をまねて、御祭神を守護する獅子・狛犬も阿吽の表情をするようになったと考えられています。平安時代にはすでに阿吽の形はできあがっていたことがわかっています。中国の唐代に造られた獅子にも阿吽の表情をしているものもあるが、決して例は多くなく、阿吽の表情は日本において確立したと考えるのが妥当でしょう(上杉千郷氏)。

 それでは仁王(獅子・狛犬)の示す阿吽の表情は、何を意味しているのでしょうか。

 そもそも、阿吽という言葉はサンスクリット語に由来しています。阿は初めの韻、吽は終わりの韻であり、そこからインド哲学ではこの二つで一切万有の原理を示すようになったと言われています。またそこから、対になる者のモチーフとして使われるようになりました。敦煌で出土した唐代の織物には有翼で阿吽の表情をし、口から「雲気」を吐いている一対の獅子の姿があります。「雲気」とは、中国の神仙思想につながるもので、「気」を多く発するものが「神仙」であり、インドから仏教が伝わると仏こそが「神仙」であるとされました。そして仏はその肩口からあたかも雲のような「気」を溢れさせる姿で表現されるようになっていったのです。このように阿吽の表情とは、神聖な霊力を示すものであると考えられています(上杉千郷氏)。このように考えてみると、阿吽の表情は、聖俗の境界線上にあって、聖なるものを守護する役割を持っており、阿吽はその内側は聖域であるということを示しているとも考えられます(liondog氏)。

◆「狛犬雑感 - 阿吽の意味するもの」(狛犬について私が知っている2、3の事柄)

 つまり一対の仁王(獅子・狛犬)の阿吽の表情は霊力の証であり、阿吽のもたらす神聖な霊力によってその先にある仏(御祭神)を守護しているのだということを意味しているのではないでしょうか。