■5. 狛犬の雌雄
狛犬には雌雄の違いがわかるようになっているものも少なくありません。しかし、狛犬の阿吽の違いは、仁王から来ており、本来両方ともオスである(というより、性別はない)というのが答えです。また、そもそも狛犬の祖先であるライオンでたてがみがあるのはオスのみですし、日本でもかつては獅子・狛犬という異なる生物が対になったものと考えられていたわけですから、同じ生物の雌雄という考え方自体がそもそも存在しないのです。そのため、獅子・狛犬が仏師によって造られていた平安・鎌倉・室町時代には、雌雄の区別はありませんでした。
しかし、江戸時代になり地方の石工が自由に狛犬を造るようになった時、阿吽は仁王に由来するという由来が忘れ去られ、自己流の解釈や様々な俗説が信じられるようになったことが、雌雄の区別のある狛犬が作られるようになった原因のようです。例えば、陰陽思想に基づき、「阿」は「陽」であるからオス、「吽」は「陰」であるからメスとされているものもある一方、その逆に弱い犬はすぐ吠えるから阿がメス、角がある方が強いから吽がオスとする説もあります。また、花嫁は角隠しをするから吽がメスという考えに至るまで、さまざまな俗説があったようです。