■8. 江戸時代の狛犬
室町時代後期からは、狛犬は従来の屋内から徐々に境内に進出し、江戸時代初期に現在のような石造の参道狛犬の形態が確立したと考えられています(→「【狛犬豆知識】置かれた場所」参照)。それとともに、狛犬の作り手も仏師から、一般の石工へと変わっていきました。しかし、当時の江戸時代の庶民や地方の石工は、それまでの宮中や本殿内に置かれた狛犬を実際に見たこともなく、手本とする作品を目にする機会もほとんどありませんでした。そのため彼らは想像力を働かせて自分なりの狛犬を作ることになったため、石工の数だけユニークな狛犬が誕生することになったのです。そしてこの頃、獅子・狛犬と呼ばれていたものが、次第に両方をあわせて狛犬と呼ぶようになっていき、獅子というより犬に似た造形のものが増えていきました。
また、この時代になると、商人や町人などの一般庶民が狛犬を奉納するようになりました。この頃の石灯籠は諸大名が寄進するものが多く、それに対して狛犬は一般庶民が奉納するものであったとも考えられています。そのためか、狛犬の表情に猛々しいところがなくなり、庶民の素朴な信仰心が込められたさまが伺えます。当初は素朴な作りのものが多かったのですが、時代を下るにつれ石工の技術が向上すると、江戸時代後期には子獅子を連れていたり、玉をもった姿の狛犬も現れるなど、地方色が豊かになり、庶民文化としての狛犬は黄金期を迎えることになりました。
ここからは、江戸時代の狛犬をいくつかの類型に分類して、それぞれの特徴をまとめていきます。
【狛犬の歴史】8-1. 江戸はじめ
【狛犬の歴史】8-2. 白山狛犬
【狛犬の歴史】8-3. 肥前狛犬
【狛犬の歴史】8-4. 仙台タイプ
【狛犬の歴史】8-5. 江戸獅子(江戸型、関東型)
【狛犬の歴史】8-6. 浪花狛犬(浪花型、関西型)
【狛犬の歴史】8-7. 獅子山型
【狛犬の歴史】8-8. 出雲型(かまえ型)
【狛犬の歴史】8-9. 逆さ獅子
【狛犬の歴史】8-10. 佐渡兜
【狛犬の歴史】8-11. 宝珠(天神系)
【狛犬の歴史】8-12. 玉獅子