■4. 奈良時代の狛犬
日本への仏教伝来は6世紀半ばの欽明天皇の頃だといわれています。現在でも東大寺・正倉院には獅子が足や柄にあしらわれた香炉などの多くの金属製の仏具が保管されています。このように日本に伝来した当初、獅子は仏具のひとつとして伝わったのではないかと考えられます。そしてこの頃、一対の獅子であったものが、獅子・狛犬と左右で違う獣として認識されるようになったようです。当時は獅子は中国本来の動物で、狛犬は中国に対する異国の獣であると考えていたようです(「狛」という語は広く「異国のもの」を指す語だと考えられています)が、詳しいことはまだわかっていません。
やがて、銅製の獅子・狛犬(以下、狛犬とします)は、宮中の御簾、几帳などを押さえる鎮子や即位式の際の守護として用いられるようになります。それが次第に、神社や寺院の神像の守護としての役割を持つようになりました。罪やケガレを祓うという伝統的なの思想が、仏教と通して日本に伝わった獅子座の思想と結びつき、狛犬は神護警衛として邪悪を祓うという特別な力を持つものとされたのではないかと考えられています。