■9. 高遠石工と狛犬
信濃(長野)にあった小さな藩・高遠藩は、江戸時代中期に財政が逼迫するようになると、農家の次男以下に石工の技術を習得させ、出稼ぎ石工として各地に送り出すようになりました(高遠石工)。藩は出稼ぎ石工から厳しく運上金を取り立てたたのですが、石工の中には流れ着いた地に身を隠して住み着く者もいました。そんな中に多くの優れた狛犬を彫った小松利平(1809年〜1893年)という石工がいました。彼は南福島に住みつき、多くの作品を残したと思わますが、脱藩者であったために台座に自分の名前を刻むことはありませんでした。
彼が養子として迎えたのが、小松寅吉布孝という石工でした。寅吉は卓越した技術と情熱ですばらしい作品を作り、南福島の小さな神社に多くの狛犬を残しました。「飛翔獅子」と呼ばれる雲に乗り空を飛ぶ狛犬という型は彼による発明ではないかといわれています。彼の一番弟子であった小林和平も寅吉の型を継承しつつも、昭和に入り数々のすばらしい作品を残しています。
ちなみに、小松利平、小松寅吉布孝、小林和平と受け継がれてきた高遠石工の作品を初めて紹介したのは鐸木能光氏ではないかと思われます。その様子は下記のサイトに詳しく書かれています。
◆「小松寅吉・小林和平の作品を見に行く 1」(狛犬ネット)